新車を購入、もしくは新古車などで製造から年数の経っていない車を購入するのはワクワクしますよね。「しばらくは傷つけずにきれいな状態を保ちたい」、「できるだけ長く乗りたい」、「せっかくローンで購入したんだからその間は事故を起こしたくない。」新しい車はそんな気持ちで運転をすることになります。
そんな中で自動車保険の内容を見直すと「車両新価特約」もしくは「新車特約」という項目があることを目にします。
しかし、今までこの特約の内容を目にしたことがないと思います。「補償の意味がわからない」「本当に必要なの?」「毎月の保険料が高くなるのならいらない」様々な思惑が頭の中でめぐります。しかし、本当に入るべき補償なのかあなた自身だけで結論を出すのは難しいかもしれません。
そこで、今回はこの新価特約の補償内容の説明をして必要な補償なのか分かりやすく解説していきます。
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車両新価特約(新車特約)とは?
まずは車両新価特約(新車特約)とは具体的にどんな補償なのか説明していきます。車両新価特約とは大きな損害を負った場合に新車相当額のお金を保険から支払う特約になります。保険会社によっては車両新車特約という名称で提供しています。この記事では車両新価特約という名称で統一して記載していきます。
なぜこのような補償があるのかというと新しい車を購入した場合、多くの方ができるだけ長く乗りたい。しばらくはきれいな状態で乗りたい。安心・安全を得るために新車を購入したというような想いをいだきます。
しかし、事故で大きな損害を負ってしまうと長く乗ることやきれいな状態、安心・安全な状態を維持することが困難になります。修理をしたとしても主要構造と呼ばれるパーツが損傷してしまうと短期間で不具合が生じる可能性もあります。その結果、せっかく買った新車を不安な気持ちのまま乗り続けなければならなくなります。
そのような状態になるのは嫌だという方のニーズを満たすのが車両新価特約になります。
車両新価特約をつけると新車価格から見て50%以上の損害が出た場合、修理を選択せずにあらかじめ設定した新車価格を上限に保険金が支払われます。
また、通常の車両保険は1年経過ごとに車両保険価格が下がっていきますが、車両新価特約を付けている場合、車両損害額が新車相当額の50%以上という条件を満たしていると新車相当額を満額支払われます。
例えば、新車購入から三年目で車両保険価格が200万円だとします。新車購入時の車両価格は300万円と設定します。この車が事故に遭い210万円の損害と認定されたとします。通常では車両保険の価格である200万円が上限となり、残りの10万円は自己負担、保険会社によっては全損諸費用という補償があるのでそれで賄えるかもしれませんが、それでも210万円が補償の限度となります。
しかし、車両新価特約を付けている場合、150万円以上の損害なので新車相当額の300万円を支払うことになります。本来は200万円しかもらえない車両保険が特約をつけていることで300万円もらえるのは大きいです。
新価特約は新車でなければ付けられないのか?
新価特約を利用するためには、車両の使用年数や走行距離に制限がある場合があります。一般的には、車両の初年度登録から3年以内、走行距離が3万キロメートル以内といった条件が設けられています。
つまり、新車であることが必要条件ではなく、車両の使用状況が一定の範囲内に収まっていることが条件となります。したがって、中古車でも一定の条件を満たしていれば、新価特約を利用することが可能です。
ただし、自動車保険は保険会社によって補償内容や条件が異なるため、詳細については保険会社に直接確認することをおすすめします。
車両新価特約は同じ車を買わないといけないの?
新車特約(車両新価特約)を使って車を買い替える場合、同じ車種でなくても大丈夫です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 買い替える車の価格が、契約時に設定した新車価格相当額の範囲内であること
- 事故日の翌日から一定期間内に買い替えること(期間は保険会社によって異なります)
例えば、ステップワゴンが全損になった場合、新車価格相当額が300万円だとします。この場合、セレナやヴォクシーなど、同じタイプの車両を購入した場合、300万円以下の車種であれば買い替えることができます。ただし、事故日の翌日から6ヶ月以内(ソニー損保の場合)に買い替えなければなりません。
逆に、ステップワゴンよりも高価なアルファードやエルグランドなどの車種に買い替える場合は、新車価格相当額を超える分は自己負担となります。また、買い替える車が同じステップワゴンでも、グレードやオプションが異なって新車価格相当額を超える場合も同様です。
したがって、新車特約を使って買い替える場合は、自分の購入したい車種やグレードと、契約時に設定した新車価格相当額との差額を考慮する必要があります。
どのような形で車両新価の保険金を受け取るのか
実際に新車相当額のお金が動くことに躊躇(ちゅうちょ)してしまう場合があります。「新車の予約を入れてしまったけど本当にお金が振り込まれるの?」という質問も多く受け取ります。しかし、車両新価の多くの場合は保険金を契約者の口座には入れずに購入するカーディーラーに保険会社から振り込むケースがほとんどです。
車両新価特約の保険金の受け取り方は、以下のようなケースが多いです。
- 事故で車が全損になった場合、または修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合、新車特約を使って新車に買い替えることを保険会社に申し出る
- 保険会社から新車特約の適用条件や必要書類などを確認する
- 新車を購入する(購入する車種は同じでなくてもよいが、新車価格相当額を超える場合は差額を自己負担する)
- 新車の購入証明書(注文書等)や登録証明書などを保険会社に提出する
- 保険会社が契約している新車価格相当額を限度額として購入先の販売店へ保険金を振り込む
以上が事故を起こした後の車両新価特約の保険金の流れになります。
新車特約を利用した場合3等級ダウンになるの?
多くのネットの記事などを見ると新車特約を利用した場合、通常1等級ダウンになる事故であっても3等級ダウンになるという内容が多いです。しかし、それは少々古い情報かもしれません。すべての保険会社ではございませんが、新車特約を利用しても1等級ダウン事故や車両無過失特則事故で利用した場合は等級ノーカウント事故になります。
私も日々保険代理店として事故の対応をしていますが、自然災害などによる1等級ダウン事故や追突されて玉突きになる事故の被害者になった場合、以前は3等級ダウンになることをしっかり説明をして了承を得ていました。しかし、新車特約の条件が緩和して通常の車両保険と同じ等級進行になったため、より一層新車特約を勧めるようになりました。
車両新価特約の具体的な支払い事例
「新車を購入してすぐに事故が起きるなんて想像ができない」
「通常は新車購入したら運転が慎重になるから事故が起きてもそんなに大きな損害になるとは思えない」
新価特約の説明をするとこのような意見をもらうことがあります。しかし、数多くの事故を見てきましたが、新車だからと言って事故が起きにくいということはありません。また、自損事故で大きな損害を被る方も見てきましたし、自分が安全運転しても他車の影響で大きな損害を被る方も見てきました。具体的な事例を掲載します。
事例1:自損事故による大損害
契約者が道路を直進中、前方からゴミ収集車がやってきました。道路にセンターラインはなく、減速、徐行をして互いが通りすぎることができる道路幅です。しかし、左に避ける際に契約者が目測を誤り、道路脇にある障害物に車両を擦ってしまいました。ゴミ収集車はその間に通り過ぎましたが、契約者が擦ってしまったことに動揺し、右にハンドルを切った際にアクセルを強く踏んでしまい、先にあった電柱に衝突してしまいました。エアバックも出るほどの衝撃でした。
この車両は新車価格300万円で購入したため、新車相当額300万円の車両新価特約を付帯していました。事故が起きたのは購入から2年後でした。この時の車両保険の車両保険金額は200万円に減少していました。損害額は180万円と認定されたため、新車特約を使って同じ車種の新車を購入し、保険金は300万円(本体価格+付属品の価格+消費税)が支払われました。
自損事故であってもエアバックが出てしまうほどの衝撃になった場合には車両新価の対象となるほどの損害になる可能性が高いです。
事例2:相手が信号無視による損害
契約者が青信号で交差点に進入したところ、左方から赤信号を無視して進入した車両と衝突し、その勢いで道路脇に立っていた電柱にぶつかり大損害になりました。相手は高齢者で信号無視をした認識は無いと主張してましたが、契約車両のドライブレコーダーと目撃者情報があったため信号無視と認定。損害額は250万円。新車購入時の価格は400万円。買ってから4年後の事故でこの時の車両保険の価格は280万円まで減少。
事例3:雹(ひょう)による損害
ゴルフボール級の雹が車体にあたり、天井、ボンネット、助手席側ドア2枚に無数のへこみが入りました。修理屋さんで損害額を計算したところ300万円の車に対して160万円の損害が認定され新価特約を使うことになりました。
このように自然災害で新車特約を使用する場合もあります。自然災害は多くなっており、想定以上の損害が発生するケースも増えていますのでそのような観点からも新車特約を検討する余地は十分にあります。
必ず押さえておくべき注意点
一見メリットしかないように感じる新車特約ですが、いくつか注意点があります。これを理解した上で新車特約の加入されるか検討してください。
・新車価格の50%以上の損害額(修理代)にならないといけない
新車特約の保険が使えるのは新車価格の50%を超えた損害額が条件となります。例えば、新車で購入した時に200万円の価格だった場合、100万円以上の損害にならないと新車特約で200万円を受け取ることはできません。仮に80万円の損害だった場合は新車特約は使えず80万円が車両保険利用分として保険から支払われます。「新車購入後に傷がついたからまた新車を購入したいために新車特約を使いたい」と思っても損害が50%を超えなければ使えないので注意してください。
・保険金を受け取るためには必ず自動車を購入をしなければならない
新車特約を利用する方で時折、「当分車に乗るのを控えるから新車分のお金だけ受け取りたい」という要望をされますが、お金だけをもらうことはできません。新車特約を利用できるのはあくまでも次の車を購入することが原則になります。なお、現在所有している自動車は新車特約を利用する時には保険会社に所有者を変更します。これは保険会社が新車価格分を保険金として支払う代わりに現在契約している車は保険会社のものにして売却等で支払った保険金の補填をするためです。
新車購入後も現在の車を家族で使いたいという要望も聞きますが、新車特約を使う場合にはこの要望は叶いませんのでご注意してください。
補償対象外となるケース
車両保険の補償範囲の中であっても新車特約を使えない事故もあります。
車両保険の対象外となる事故
- 地震、噴火、津波などの自然災害
- 車両の欠陥や自然消耗による故障
- 無免許運転や飲酒運転などの違法行為
- 故意による事故
- 戦争、テロ、暴動など
以下は事故があっても新車特約は使えず、通常の車両保険の保険価格が上限となります。
- 盗難(車両保険で補償されます)
車種によっては盗難被害の多い車両もあります。盗難対応のために車両保険に加入する方も多いですが、盗難補償については車両新価特約の対象外となります。あくまでも年度ごとに設定される車両価格内の補償のみ受け取ることができます。
以上のような場合には新価特約の補償対象外や車両保険自体が使えない場合もございますのでご注意ください。
車両新価特約を付けることが可能な主だった保険会社
車両新価特約をつけることができる保険会社は限られています。以下の保険会社が新価特約が可能な主要な会社となります。
・東京海上日動
・損保ジャパン
・三井住友海上
・あいおいニッセイ同和損保
・ソニー損保
・イーデザイン損保
・セゾン自動車火災(おとなの自動車保険)
上記の保険会社であれば車両新価特約(車両新車特約)をつけることができます。
数社から比較するポイントは車両無過失特約が適用されるか否か
新価特約が利用できたとしても上述した車両無過失特約(ノーカウント事故)が使えるかどうかです。当サイトにて調べる限り、主だったノーカウント事故で新価特約が使える保険会社は以下になります。
・東京海上日動
・損保ジャパン
・イーデザイン損保
・セゾン自動車火災(おとなの自動車保険)
以上になります。東京海上日動とイーデザイン損保は同じグループ会社で2021年からノーカウント事故になりました。損保ジャパンとセゾン自動車火災も同じグループ会社で2022年からノーカウント事故になりました。他の保険会社も他社を追随すべくノーカウント事故につながるかもしれません。
しかし、ノーカウント事故で新価特約の利用者が増えると今度は反対に新価特約をノーカウント事故として扱わず、3等級ダウン事故になる可能性もあります。利用価値の高い特約なのでいつノーカウント事故ではなくなる可能性も十分ありますので、新価特約をつける場合や、新価特約を更新をする際には保険会社にノーカウント事故として扱えるかをしっかり確認の上判断してください。
まとめ
どうでしたでしょうか。以下が今回の記事のまとめになります。
車両新価特約(新車特約)の概要
車両新価特約とは?
・ 新車相当額のお金を保険から受け取ることができる特約。
・大きな損害を受けた場合に新車価格を上限に保険金が支払われる。
・通常の車両保険と異なり、経年による補償額の減少がない。
補償の対象
新車だけでなく中古車も対象
・一定の条件を満たせば中古車にも適用可能。
・保険会社ごとに条件が異なるため、詳細は確認が必要。
新車価格の50%以上の損害が条件
・修理を選択せずに新車価格を上限に保険金が支払われる。
・50%未満の損害の場合は通常の車両保険が適用される。
保険金の受け取り方
保険金の支払い方法
・契約者の口座ではなく、購入するカーディーラーに保険会社から直接支払われるケースが多い。
・買い替える車の条件:同じ車種である必要はなく、価格が新車価格相当額の範囲内であれば別の車種も選択可能。
等級への影響
等級ダウンの有無:新車特約を利用すると原則、事故内容に応じて等級ダウンとなる。ただし、ノーカウント事故に対して新価特約を使用する場合は等級ダウンされる会社とノーカウント事故として扱われる会社が分かれる。
注意点
・新車価格の50%以上の損害が必要:損害が50%未満の場合は新車特約が適用されない。
・必ず車両を購入する必要がある:新車特約の保険金を受け取るためには新たに車を購入することが条件。保険金のみを受け取ることはできない。
補償対象外の事故がある
地震、噴火、津波などの自然災害や、無免許運転、飲酒運転などの違法行為は補償対象外。また、盗難による車両紛失は新価特約の対象外となるため注意が必要。
新車特約を提供する主な保険会社
主要保険会社
東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、ソニー損保、イーデザイン損保、セゾン自動車火災
保険会社の選び方
比較のポイント
・車両無過失特約が適用されるかどうかを確認
・複数の保険会社の条件を比較して選ぶことが重要
結論
新車を長期間安全に使用したい場合、車両新価特約(新車特約)は非常に有用な補償です。特に大きな損害を受けた際の補償が手厚く、新車購入後の安心感が増します。さらに新価特約をつける際にどこの保険会社にするか迷ったときは車両無過失特約を利用できる会社を調べてより利用価値の高い保険会社を選んで加入しましょう。