交通事故で怪我を負うと色々な不安が付きまといます。怪我で普段どおりの生活が出来ないのもありますが、怪我の治療費や仕事を休んだ時の補償など金銭的な不安もあります。
自分で起こした事故による怪我ならまだ割り切れますが、もらい事故などで被害者となった時には割り切れません。「何でこんな目に合わなければ行けないのか」と誰しも思います。
そんな被害者のために自動車事故の場合は治療費以外に慰謝料を加害者に請求することが出来ます。しかし、保険会社の言われるがままにしていても満足のいく結果になるとは限りません。
かと言って保険会社に自分の主張を言い続けてもそれが認められるわけでもありません。
まずは自動車事故における慰謝料の仕組みを知ることが大事です。慰謝料の仕組みを知ったうえでどのように交渉、対応をすれば満足のいく結果に近づきます。
今回は交通事故、自動車事故でいくら慰謝料がもらえるかの仕組みと対応方法について説明します。
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交通事故における慰謝料の基準
交通事故による「慰謝料」と言う言葉を聞くとあまり良い気持ちがしないかもしれません。
確かに事故でケガを負わされたから迷惑は掛かったけど、慰謝料が欲しいとは思っていない、もしくは相手に言いづらいという声もたくさん聞きます。
慰謝料と言う言葉はものすごく悪い事をした人が相手に支払うイメージがあります。そしてそれを受け取る方も良いイメージが無いようです。
交通事故における慰謝料はそういったイメージとは異なります。交通事故の慰謝料とは「事故によって被害者が精神的に苦痛を負ったことに対する補償料」という事になります。
そして、交通事故の慰謝料はしっかりと法律にもとづいた基準の中で被害者に支払う仕組みになっています。
慰謝料と損害賠償の違い
私は日々自動車保険を販売し、契約者の事故の対応などをしています。その中でお客様から「損害賠償と慰謝料の違いって何?」と質問をされます。
損害賠償と慰謝料の違いは事故に遭った被害全部の補償が損害賠償でその中の精神的な苦痛の補償を慰謝料と言います。慰謝料は損害賠償の一部と考えてください。
具体的に言うと交通事故における損害と言うのは目に見える損害と目に見えない損害があります。目に見える損害と言うのは以下のようなものがあります。
・自分の車の修理代(その他壊されたものの損害)
・ケガの治療費(入院や通院)
・病院までの交通費(ガソリン代やタクシー代など)
・ケガの箇所を固定するための器具(ギブスなど)
・仕事を休んだ場合の日当の給料
これに対して目に見えない損害と言うのが以下のようなものがあります。
・ケガによる日常生活の困難
・通院を続けることのストレス
・事故にあった時の辛い想いが頭から離れない
このような他人からは解らない精神的な損害と言うのもあります。そういう苦痛に対して何の補償もされないというのは被害者にとって不利益になります。そこでこの不利益を補償するために慰謝料を支払う事になります。
慰謝料以外にもらえるお金はあるのか?
先ほどの目に見える損害も当然事故を起こした加害者から補償されます。車をぶつけられたのであれば修理費、ケガの治療費、交通費、働けなくなった場合の給料の補償などもあります。
被害者に不利益にならないように法律に基づいてしっかりと補償する仕組みが出来ています。
慰謝料の支払い基準
それでは具体的に慰謝料がどのような基準で支払われるのか見ていきましょう。自動車事故における慰謝料の基準は大きく3つあります。
1,自動車賠償責任保険(自賠責保険)基準
2.任意保険基準
3.弁護士基準
以上の3つの基準です。
それぞれが異なる基準で慰謝料の金額を算定します。最初にも書きましたが、この3つの基準をしっかり理解する事で同じ事故でも慰謝料の金額が大きく異なります。
順番に説明します。
自賠責保険基準
まず自動車賠償責任保険、いわゆる自賠責保険の基準から説明します。どの保険会社も自動車事故の怪我の慰謝料の計算はまずこの基準から始めます。
自賠責保険基準は慰謝料の基礎となる計算基準です。
自賠責保険とは自動車の車検を取る時に必ず必要となる保険です。俗に強制保険と言います。その名の通りこの保険に加入していないと車検が通らず、一般の道は運転出来なくなります。
自賠責保険は国の法律で支払う保険料が決められています。そのためどこの保険会社で入っても保険料は一緒です。
自賠責保険の細かい仕組みは今回のテーマと異なるので省略しますが慰謝料の自賠責基準は以下の計算方式になります。
通院回数×8,400円
治療期間(全日数)×4,200円
※上記のいずれか少ない額が基準となる
具体的な事例を基に見ていきましょう。
計算例1
事故日:2月1日
完治日:4月1日(治療期間:60日)
通院回数:20回
通院回数(20)×8,400=168,000円
治療期間(60)×4,200=252,000円
通院回数の方が少ない額なので、慰謝料は168,000円となる。
計算例2
事故日:1月1日
完治日:4月30日(治療期間:120日)
通院回数:65回
通院回数(65)×8,400=546,000円
治療期間(120日)×4,200=504,000円
治療期間の方が少ない額なので、慰謝料は504,000円となる。
上記の事例のように通院回数と治療期間のうち、少ない方が慰謝料となります。あなたがケガをした時に周りの方から「たくさん通院した方が良いよ」と言われることがあるかもしれません。
これは半分あっていて半分間違っています。
通院回数が多くなると治療期間の方が額が少なくなります。そうすると通院回数の意味がなくなります。
例えば、1ヶ月の治療期間で毎日通院して30回通ったとします。
通院回数の計算方法だと30回×8,400円=252,000円となります。
治療期間の計算方法だと30日×4,200円=126,000円となります。
治療期間の方が少ない額となりますので126,000円が慰謝料となります。
このように頑張って通院をたくさんしても無駄になる可能性もあるので、無理して通院をせずにゆっくりじっくりケガを治してください。
自賠責保険基準の注意点は怪我の賠償額の上限が120万円と決められています。賠償額の中には治療費や交通費、休業損害なども含まれるので慰謝料を含めた賠償額が120万円を超えることもあります。
120万円を超えた場合、超過分は次に説明する任意保険の基準で計算されます。
任意保険基準
任意保険とはあなたが現在加入している自動車保険の事です。自賠責保険は車の購入先や車検をしてくれる車屋さんが自動的に入れてくれます。
それに対してあなたが毎年契約や更新をしている自動車保険は「任意保険」と呼ばれます。
自賠責保険の賠償額の限度である120万を超えた分がこの任意保険基準で計算された慰謝料を支払います。
任意保険の基準は各保険会社によって異なります。しかし、異なるとは言えA社とB社の基準が2倍異なるというものはありません。異なるといっても大した差ではありません。
保険会社の慰謝料の具体的な基準は一般に公表されていません。なので自賠責保険基準のようにどのぐらいもらえるかがすぐ計算出来ません。
仕組みだけ説明します。任意保険基準は通院期間に応じて慰謝料を決めますが、月当たりの通院回数が少ないと減額されます。
なぜなら、通院期間だけを考慮してしまうといたずらに治療を長引かせる人に有利になるからです。
たとえば、治療を開始してから5ヶ月を経過した方で一方はまだ週に4回は通院していてもう一方は月に2回しか通院していないとします。
どちらが日常生活に支障をきたしているか、どちらが通院によるストレスを抱えているかは一目瞭然です。
任意保険の基準はこのような不公平さを無くすような仕組みになっています。
弁護士基準
弁護士に依頼して慰謝料の請求をする方法もあります。弁護士に依頼する点で一番のプラスは慰謝料が弁護士基準になる事です。
弁護士基準とは過去の交通事故による裁判の事例から慰謝料を決める方式です。過去の同じような裁判例をもとに慰謝料を交渉してくれます。
ポイントは弁護士に依頼すれば必ず慰謝料が上がるとは限らない点です。弁護士の裁判基準も通院期間や症状などを考慮して似たような事例を根拠に交渉してくれます。
弁護士に慰謝料を請求してもらう目安は二つあります。一つは治療期間が長い(おおよそ3ヶ月以上)場合。もう一つは後遺障害といってケガを負った部分が治療をしても治らないと医師が診断した場合に認定される診断になった場合です。
後ほど詳しく説明しますが、弁護士に依頼するかどうか判断に迷うようであれば、とりあえず弁護士に相談をして見解を聞くのが良いです。迷った時は一度弁護士に相談をしてから決めるようにしてください。
慰謝料の具体的な請求方法について
それでは実際に慰謝料をどのように請求すれば良いのかを解説していきます。
自賠責保険・任意保険の慰謝料請求の場合
自賠責保険と任意保険の慰謝料請求はとても簡単です。自賠責保険の慰謝料の請求については相手の保険会社があなたや加害者に代わり自賠責保険機構に請求を行います。
あなたが手続きするとすれば保険請求書というものにご署名や振込先口座を記載するぐらいで済みます。
任意保険基準についても自賠責保険と基本は変わりません。相手の保険会社が自賠責保険と併せて対応します。
もし、相手が無保険であった場合にはあなたの自動車保険の補償である人身傷害保険を使えます。手続は基本一緒です。あなたは保険会社から送られてきた保険請求書などにご署名や必要事項を記載すれば大丈夫です。
この保険だけを使っても等級に影響はないので保険料が大きく上がるような心配はありません。
弁護士基準で慰謝料を請求したい場合、どのタイミングで弁護士に相談すれば良いのか?
慰謝料を計算する3つの基準のうち、条件が合えば弁護士に依頼して慰謝料を請求してもらうことが一番多く取れることになります。
しかし、弁護士に依頼すれば多く慰謝料がもらえると簡単に言われても「それで実際にどうやって弁護士に頼めば良いの?」と疑問に思うかもしれません。
弁護士に何か依頼するという事は今までの人生であまりない事だと思います。そこでどのタイミングでどのような方法で弁護士に依頼すれば良いか解説します。
まず弁護士に依頼するにあたって確認して頂きたいのがあなたの自動車保険に「弁護士費用特約」と言うものに入っているかです。
この弁護士費用特約と言うのは被害事故にあった時に弁護士へ交渉の依頼をすることが出来るオプションです。
弁護士費用特約について詳しい内容を記載したページがありますのでそちらも参考にしてください。
この特約に加入されているのであればどのタイミングで依頼をしても良いです。しかし、私がおすすめするのはケガを負ってからすぐに依頼することです。
なぜかと言うと、弁護士に慰謝料含めた交渉を依頼した場合、弁護士から具体的どのように治療の通院をすれば良いか直接相談できるからです。
私の契約者の中にも治療が終わって慰謝料を見て不服で弁護士を依頼する方もいますが、治療が終わった後よりも治療開始直後や治療中に弁護士に頼む方がどのような形で通院すると慰謝料請求に良いというアドバイスをもらえます。
弁護士費用があれば最初からじっくり弁護士と打ち合わせをしてそのあとの対応もしてもらえます。とても楽に、そして確実に慰謝料を多くもらうことが出来ます。
弁護士費用特約に加入していない場合
もしあなたが弁護士費用に入っていないという場合でも弁護士にお願いすることは出来ます。デメリットとしては弁護士にお願いする費用は実費となってしまいます。
もし、慰謝料が依頼前よりも多くなるのであればお願いする価値はあります。ただし、弁護士事務所の中には初回から相談費用を取られる場合もあります。
そんな時は無料で事故の慰謝料の相談が出来る機関があります。日本弁護士連合会(日弁連)交通事故紛争センターと言う機関があります。こちらに相談をして具体的にどのぐらい慰謝料が取れるかの見解を聞いたうえでお願いするのが良いです。
直接聞きに行く時間がない。または最初は電話やメールで相談したいという場合は交通事故に精通した法律事務所があります。
ホームページなどで交通事故のページが記載されている法律事務所にメールや電話で連絡して見解や依頼費用を聞いて良いと感じたら委任を頼むという流れでも良いです。
以上のように、弁護士に慰謝料請求をお願いする場合、弁護士費用特約に入っているのであればすぐにでも。
入ってなければ無料で対応している機関や法律事務所に相談の上、慰謝料が自賠責基準よりも高く取れる見込みがあれば依頼をしてください。
まとめ
今回は交通事故の慰謝料がいくらもらえるのか、具体的な計算基準などをもとに解説してきました。
まとめると以下のポイントになります。
・自動車事故における慰謝料の計算基準は3つ(自賠責・任意・弁護士)
・自賠責基準が慰謝料を決める最初の基準。自賠責の上限を超えると任意保険基準
・弁護士基準とは裁判例を基にした基準。治療期間や後遺認定などの条件が満たせば一番多くもらえる
・弁護士に依頼するときに役立つのは自動車保険の弁護士費用特約
・弁護士費用特約があればケガを負ってすぐにでも相談するのが良い
・弁護士費用に入っていない場合は無料で対応してくれる法律機関や法律事務所にまず相談する
以上になります。ケガを負って日常生活に支障が出て自分ばかり損をした気持ちになります。そんな気持ちに対して慰謝料は支払われます。
辛い気持ちがお金で解決するわけではありませんが、少しでも多く慰謝料をもらうことで気持ちを切り替え、前向きに生活してほしいと願います。