初めて自動車保険に入る時や自動車保険を見直すときに「弁護士費用ってなんですか?」と質問を受けます。
自動車保険で弁護士を使うというのはあまりピンと来ないかもしれません。
中には「代理店の担当者が弁護士代わりだから大丈夫」
「保険会社が相手と直接交渉するから弁護士なんて必要ないでしょ?」
「保険会社が弁護士使うのに何で私がオプションで入らなければいけないの?」と言う声を聴くことがあります。
しかし、普段から事故の対応を行っている私の経験上、弁護士費用は絶対に付けた方が良いです。
今回は弁護士費用という補償についての説明と付けるべき理由を解説致します。
Contents
弁護士費用特約とは
弁護士費用とはあなたが運転中や自動車に伴う事故で「被害事故」に遭った場合に弁護士に交渉を依頼することができるサービスです。
ここでポイントとなるのはあくまでも「被害事故」の場合のみ使うことができるサービスです。たとえば、あなたが信号無視などで相手の車にぶつけてしまった場合は加害事故になるので弁護士費用を使うことはできません。
事故の状況によってはどちらが加害者でどちらが被害者か解らない事故があります。そのような場合、あなた自身は被害者と言う見解があれば弁護士費用を使うことは出来ます。
運転中以外にも使うことができる
保険会社によっては契約している車の運転中以外にも使うことが出来ます。たとえば、あなたが歩行中に車にぶつけられケガを負った場合、相手が無保険や賠償の交渉に応じない。このような時に契約している自動車保険の弁護士費用を使い、相手と交渉をしてもらうことが出来ます。
このように弁護士費用は被害事故において相手と交渉が必要な時に弁護士に依頼することができる補償になります。
弁護士費用が必要な事例
それでは被害事故で弁護士に交渉を依頼する事故とはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
これは私が実際に依頼をした事例ばかりです。
事故の相手が自動車保険に入っていなかった場合
当社の契約者が信号待ちの状態で追突された事故です。追突事故は避けようのない事故と判断されるため、被害者の過失はゼロになります。追突した相手が全部の損害を負います。
相手が自動車保険に入っていれば車の修理代は対物賠償から、怪我の治療は対人賠償から支払われます。しかし、相手が自動車保険に入っていない場合、修理代や治療費などを相手に直接請求しなければなりません。
さらに大変なのは、修理代や治療費などの請求をあなたが契約している保険会社で対応をしてくれません。
なぜかというと保険会社の社員が動くときは自社の保険を使用するときに限るからです。もらい事故相談サービスと言うものは保険会社にありますが、相手に直接連絡をしたり損害金の請求をしたりするわけではありません。
このような時に弁護士費用を使用すると弁護士があなたに代わり相手への連絡や損害金の請求をしてくれます。さらに相手が支払いに応じない場合、裁判まで対応をしてくれます。
私はサービスとして相手との接触をしていますが、代理店として長く働いている私でも対応には苦労します。これを事故に慣れていない方が自力で対応するのはほぼ不可能に近いです。
それを全て弁護士が対応してくれるのは助かります。相手と直接やり取りをしなくて済みますし、相手も弁護士が出てくると驚いてしっかり弁償する場合もあります。
相手の保険会社がケガの治療を止めに入った場合
相手の過失が重い事故でこちらがケガを負った場合、相手の保険会社からケガの補償をしてもらいます。しかし、ケガがまだ治っていないのに相手の保険会社が治療をそろそろやめるように言われるケースがあります。
多くの場合は首のむちうちや腰痛など目に見えない痛みに対してです。大体3ヶ月経過すると相手の保険会社から治療をストップするようにさいそくが来ます。
しかし、なかにはまだ全然治っていない方もいます。場合によっては痛くて会社を休んでいるのに治療をやめるように言われるケースもあります。
これは余分な治療費や賠償金を支払いたくないという保険会社の思惑があります。こう書いてしまうと保険会社が悪者に見えるかもしれませんが(本当に悪者の時も正直ありますが)、保険会社としては本当は治っているのに治療を続ける人が後を絶たず会社の利益を圧迫しているという事情もあります。
専門的な話をしますとケガで治療をする際に相手に対して保険会社は治療費に加えて一回の通院に当たり数千円の賠償金を支払わなければなりません。
被害者は通院回数に応じて賠償金が支払われるのです。そうすると、通院をたくさんすれば賠償金がたくさんもらえると考える人も中には出てきます。
本当はケガをしていない。ケガをしても治ったのに賠償金欲しさに長い期間治療に通う人が増えてしまい、保険業界で問題になったのです。
そういう前提があるので保険会社はむちうちや腰痛の場合、大体3ヶ月通えば治るというデータを基に治療を止めることを言ってくるのです。
しかし、3ヶ月を経過しても治らず本当にケ苦しんでいる方はいます。治療を継続したいのに保険会社からストップをかけられてしまう。そんな時に弁護士を立てることで保険会社に治療延長の交渉してもらえます。
加害者側の保険会社が提示してきた慰謝料に納得が出来ない場合
自動車事故でケガを負った場合に相手から通院回数や入院日数などに応じて被害者に対して慰謝料が支払われます。慰謝料の基準と言うのは原則は自賠責保険と言う車検を通すときに強制的に加入する保険です。この保険は言うならば国の機関が法律に則って運営しているものです。
そのため、あなたが求めている慰謝料と実際に自賠責保険の計算式で出てくる慰謝料には差が出るかもしれません。
また、自営業の場合やケガは大きくないと診断されても日常生活で不便になったなど目に見えない損失を負った時には提示される慰謝料に納得できない場合もあります。
そんな時に弁護士費用を使えば慰謝料の請求を行ってもらえます。弁護士に依頼して慰謝料を請求する大きなメリットは先ほど記載した自賠責基準というものではなく裁判例基準によって慰謝料を提示してもらえることです。
自賠責基準よりも裁判例基準の方が慰謝料が大きくなる可能性は十分あるので依頼するだけでもメリットがあります。裁判例を基準とした場合の慰謝料がいくらになるのか。交通事故の慰謝料が計算できるサイト もあります。
このようなサイトを基に慰謝料が高くなる可能性があれば弁護士に依頼すると良いです。
事故の相手と過失の内容で折り合いが付かない場合
車と車が走行中に起きた衝突事故の時、お互いに過失が発生するケースがあります。
そのような事故の場合、相手側から提示された過失割合に不服な時に弁護士を依頼して過失割合減額の交渉が出来ます。
車同士の事故で大きくもめるのはお互いの主張が食い違う時です。車同士の事故の場合、追突事故やセンターラインオーバー、信号無視以外で相手に全部の過失を負わせる事はできません。
ようはお互い走行中の事故は自分に過失は無いと思っても多くの場合少なからず過失が発生してしまいます。
しかし、事情をより詳しく聞くと確かにぶつかるタイミングやぶつかった車の傷の位置を見ると過失がゼロに出来る可能性のある事故もあります。
当社で対応した事故例として当社が直進、相手が一時停止を無視して衝突したものがあります。
通常、一時不停止による直進同士の事故は優先車2割、一時不停止車8割の過失になります。
しかし、契約者に事故の状況を聞くとぶつかるまで右側から車が来たことが解らなかったと主張されました。
私も言われた状況、契約者の損傷箇所、現場のブレーキの跡や衝撃を受けた後の動きなどを調査しました。
その結果、相手は一度も減速せずに交差点に入り、直進してきた契約者が交差点を通り過ぎるタイミングでぶつけた事がわかりました。
その結果を相手の保険会社に伝えますが通常通りの2対8を変えてくれません。
そこで弁護士費用を使い弁護士と一緒に状況の検証などを行い、契約者は交差点内に入っても気づける状況ではなく回避は不可能という内容をまとめて相手の保険会社に提出しました。
相手の保険会社も弁護士事務所からの報告書に妥当性があると判断して相手の10割の全面過失を認めました。
弁護士を間に入れなければ相手の保険会社は主張を曲げることは無かったと思います。また、こちらが相手の10割過失を求める場合、自分の保険会社は何の対応もしません。
なぜかと言うと保険会社の示談交渉サービスは契約者無過失の場合行わない契約となっています。
当社のような代理店で加入されている場合には代理店がサービスで交渉するケースもありますが、通販型や事故に慣れていない代理店は対応してくれません。
そういった点からも無過失を主張したい時にも弁護士費用は必要不可欠な補償です。
以上の事例からもいくら気を付けて運転しても他の車の状況で交渉が困難な場合もあります。そんな時の弁護士費用があると状況が好転する可能性があります。そういう理由からも弁護士費用は必要な補償と考えられます。
弁護士費用を使うと等級は下がるの?
弁護士費用の説明をすると多くの方から「でも弁護士使うと等級が下がって保険料が上がるんでしょう?」と言われます。
実は、弁護士費用を使うだけでは等級は下がりません。
確かに弁護士を使ってその結果相手の賠償分を保険で支払ったら等級は下がり保険料は上がります。保険使用と等級の変動の内容が解らないようでしたら別のページに詳しくまとめたので見てください。
もし弁護士を使って相手にこちらの保険で支払うものがない場合には等級は下がりません。もちろん弁護士には保険会社から相談費用や報酬を支払ってもらえます。
なので事故で少しでも気になる事があれば弁護士を使う方が良いのです。
弁護士はどのように選べばいいのか?
「弁護士費用の必要性はわかりました。だけど弁護士をどう選べば良いかわからない。私知り合いの弁護士知りませんよ。」
そういう不安が出るかもしれません。
ただし、弁護士を選ぶのはそこまで難しくありません。弁護士を選ぶ方法は大きく分けて3つあります。
1.自分で弁護士を選ぶ
2.保険会社に弁護士を紹介してもらう
3.代理店に弁護士を紹介してもらう
このように、弁護士は比較的自由に選べます。
1.自分で弁護士を選ぶ
知り合いに弁護士がいる場合や地域で評判の弁護士にお願いしたい場合でも弁護士費用は使えます。
当社の契約者にもこの先生が良いというリクエストを受けることがあります。
最近ではインターネットで調べて良い評価の弁護士や法律事務所にお願いしたいというケースも増えてきました。
ただし気を付けて頂きたいのは弁護士費用の報酬は保険会社が決めた報酬額になります。
そのため中には保険会社が提示する報酬額では引き受けられない弁護士もいるのでご注意ください。
2.保険会社に弁護士を紹介してもらう
知り合いや周りに弁護士がいないという場合には保険会社に紹介してもらう事ができます。保険会社から紹介してもらうメリットは自動車事故の対応に明るい弁護士に依頼する事ができる点です。
多くの保険会社は地域の弁護士と提携して事故の対応などを行なっています。そのため事故の経験が豊富である程度の案件であれば問題なく解決まで運んでくれます。
あなたがわざわざネットで調べて探すよりも手間もかからず経験豊富な弁護士に依頼できます。
反対にデメリットは自分にとって合う弁護士が選ばれる訳ではないという点です。相性が合わない恐れがあるという事です。
保険会社の担当者は多くの契約者と事故の対応をしています。事故の対応以外で契約者と接する事が無いので一人一人の契約者の性格は把握できません。そのため弁護士紹介を依頼されたら提携している弁護士を適当に選んで紹介します。
あなた自身に合う合わないはそこでは分からないので実際に弁護士と打ち合わせをして不快な思いや不安な思いを抱くかもしれません。その時に保険会社からせっかく紹介された弁護士なので変えてほしいとはなかなか言えません。
相性が合わないとあなたが思うような方向に事故対応が進まず、悪い結果になる恐れもあります。
合わなければ遠慮なく別の弁護士を依頼するなどの対策も考えてください。
3代理店に弁護士を紹介してもらう
代理店型の保険に入っている場合、弁護士を紹介してもらう方法もあります。
メリットは代理店は契約者の性格や事故の内容を考慮してその事故にぴったりの弁護士を紹介する事ができます。
私もそうですがこのような事故の場合にはこの弁護士、この契約者であればこの弁護士が合うななどと弁護士を依頼した後のことを考えて紹介をします。
契約者、弁護士どちらにも思い入れがあるので代理店としては適当ではなく慎重に弁護士を選んでくれます。
デメリットは通販型の自動車保険に入っていると紹介をする事が出来ない点です。
代理店が出来なくは無いですが契約がない以上、自分の契約者よりも真剣味は落ちます。
通販型に入っていて弁護士を紹介してもらいたい場合は加入している保険会社から弁護士を依頼してください。
弁護士費用のデメリット
弁護士費用を付けるデメリットは無いのか?そういう疑問が浮かぶかもしれません。私は今まで書いたように弁護士費用を付けることをお勧めしますが、デメリットもあると考えています。
デメリットは弁護士費用を使ったとしても、自分の思うように結論が出るとは限らないということです。
よくテレビドラマで「敏腕弁護士」がどんな事案でも勝訴させるというストーリがあります。テレビのイメージがあるので契約者からも「敏腕弁護士を紹介してください」とお願いされることもありますが、これはあくまでもテレビの中でのストーリーです。
自動車事故で相手と争い裁判まで行くケースを何度も経験していますが、弁護士の意見一つで全面勝訴という事はありません。あくまでも集められるだけの証拠を集め、こちらの内容を主張しますが、相手も自分自身の主張を通します。
その結果、裁判所はどちらの主張が正しいか一方的に決めることは無く、和解やお互いの主張の妥協案などを提示します。
たとえば、当社の契約者が裁判まで行った事故の一つとして相手が信号無視をした事例があります。
相手は高齢の方で信号無視をしたという自覚がありません。事故を見ていた目撃者でもいれば状況は変わったかもしれませんが、目撃者もいませんでした。
こちらは当然相手の信号無視で起きた事故なので相手が全過失で全ての損害を支払ってもらうように主張しました。相手は黄色ぐらいで自分は入ったのでこちらの方が赤信号から見切り発車したという主張でした。
これは裁判まで争いましたが、最終的には和解案として相手から8割、こちらが2割の損害負担することになりました。当社の契約者は相手が10割負担するために争いましたので、不服な結果になってしまいました。
これ以外にも過失割合などで裁判までするケースはありますが多くの場合でこちらの主張が全部通るという経験はありません。相手がいる以上裁判所もお互いの主張を吟味して折り合いが付きそうな案を出してきます。
なので、弁護士に依頼すればあなたの主張が通せるとは限らないと思ってください。
まとめ
今回は弁護士費用について解説してきました。弁護士費用を付けると自動車保険の支払いも多くなるので本当に必要なのか疑問に思うかもしれませんが、多少保険料が高くなってもつけることをおすすめします。
おすすめの理由を含め今回書いた内容をまとめます。
・弁護士費用は自動車事故で被害にあった時に相手側との交渉を弁護士に依頼できるサービス
・自分の車に乗っている事故だけではなく歩行中に自動車にひかれるなどの事故にも対応できる
・事故の相手が無保険の場合、弁護士費用が無いと直接交渉する可能性がある
・相手の保険会社との交渉で弁護士に依頼すると賠償金や治療期間の延長などを交渉してくれる
・お互いに過失がある事故で相手と過失割合でもめた場合、弁護士が交渉してくれる
・弁護士費用を使うだけなら等級は下がらない
・どの弁護士に依頼するかは契約者で決めることが出来る
・どの弁護士に依頼して良いか解らない場合は保険会社や代理店に紹介してもらう事も出来る
・弁護士費用のデメリットは自分自身の主張が必ず通るわけではない
以上になります。
自動車保険はいざという時に役に立つ保険です。弁護士費用はいざという時に役に立つ補償なので必ず加入することをおすすめします。
もし、弁護士費用に入りたくても予算オーバーになってしまうという場合には一括見積もりサイトなどで一番安い保険会社を調べて会社を乗り換える方法もあります。
必要な補償を削って支払いをおさえるのではなく、保険会社を乗り換えて支払いをおさえる方がいざという時に役に立つ保険になります。